運送業

運送業

次のタイトルをクリックするとそれぞれの項目へ飛びます。

運送業において下請法が適用される場合

当社は、運送業を営んでいるところ、同業務の一部を複数の下請運送業者に請け負ってもらっています。
運送業の下請取引については下請法という法律が適用される場合があると聞きましたが、どのような場合に当社と下請運送業者との間の取引に下請法が適用されるのですか。

運送業務の下請取引は、発注する法人事業者と受注する法人又は個人事業者の資本金等が以下の関係にある場合は下請法の適用を受けます(下請法2条4項、7項、8項)。

〈親事業者〉 〈下請事業者〉
3億円超 3億円以下
1千万円超3億円以下 1千万円以下

従って、貴社と下請運送業者との資本金が上記の関係にある場合は下請法の適用があることになります。

(山田洋嗣)

下請法による規制の内容

下請法の適用がある場合にはどのような規制があるのですか。

下請法の適用がある場合には、まず、注文書等の書面の交付義務(同法3条)、書面の作成・保存義務(同法5条)、受領から60日以内の支払期日の設定義務(同法2条の2)、遅延利息(現在は14.6%)の支払義務(同法4条の2)が課せられます。
また、支払遅延(同法4条1項2号)、下請代金の減額(同3号)、買いたたき(同5号)、購入強制(同6号)、報復措置(同7号)、割引困難な手形交付(同法4条2項2号)、経済上の利益の提供要請(同3号)、不当なやり直し(同4号)が禁止されます。

(山田洋嗣)

下請法違反の効果(1)(60日以内の支払義務違反について)

下請法が定める受領から60日以内の下請代金の支払いをしなかった場合、どうなりますか。

下請法が定める義務のうち、受領から60日以内の支払期日の設定義務と遅延利息(現在は年14.6%)の支払義務については、それに反する合意は私法上当然に無効であり、上記利率の遅延利息の支払いが強制されます。
従って、仮に受領から60日より長い期間の支払期日を合意していても、受領から60日経過すれば支払いをしなければならず、60日経過後については年14.6%の割合による遅延損害金が発生することになります。

(山田洋嗣)

下請法違反の効果(2)(60日以内の支払義務違反以外の違反について)

下請法の定める義務・禁止行為のうち、受領から60日以内の支払期日の設定義務と遅延利息(現在は年14.6%)の支払義務以外の義務・禁止行為に違反した場合の効果を教えて下さい。

まず、受領から60日以内の支払期日の設定義務と遅延利息(現在は年14.6%)の支払義務以外の下請法が定める義務・禁止行為に違反する合意をした場合は、同合意が私法上当然無効になるわけではありませんが、「不当性が強い場合」には公序良俗に反して無効となり得るとされています。例えば、単価引き下げの合意をした場合、その合意成立前に既に発注されている給付に新単価を遡って適用して代金を減じることは、遡及適用の期間、新単価との差額等を勘案して不当性が強い場合に当たるとされる場合があります(東洋電装事件・東京地裁昭和63年7月6日判決)。
また、下請法違反の行為が、不法行為上違法と評価できる場合等については、損害賠償請求を受ける場合もあります(エビス食品企業組合事件・最高裁 昭和47年11月16日判決参照)。

(山田洋嗣)

大規模スーパーなどから運送業務の発注を受ける場合の規制の内容について

当社は多店舗展開する大規模スーパーから運送業務を請け負っています。同スーパー自身は運送業を営んでいませんので、下請取引ではありません。しかし、企業規模や取引の力関係上、同スーパーから無茶な要求があっても聞かざるを得ません。今後そのような要求がされた場合どのように対処したらようでしょうか。

下請取引でなくても、運送業については、荷主と運送業者の資本金に以下のような関係がある場合は、独禁法上一定の規制がされています(独禁法2条9項6号、平成16年3月8日公正取引委員会告示第1号・備考)。

〈荷主〉 〈運送業者〉
3億円超 3億円以下
1千万円超3億円以下 1千万円以下

規制の内容としては、上記関係にある荷主と運送業者との運送委託又は保管委託の取引において、支払遅延(前記特殊指定1項1号)、代金の減額(同2号)、買いたたき(同3号)、購入強制(同4号)、割引困難な手形交付(同5号)、経済上の利益の提供要請(同6号)、不当なやり直し等(同7号)、報復措置(同8号、同2項)を行った場合には独禁法2条9項6号に該当することになります。そして、上記違反は通常の場合、優越的地位の濫用(独禁法2条9項5号)にも該当する場合が多いと考えられ、それが継続してするものの場合は課徴金納付命令の対象になり得ます。
もし、貴社と荷主である大規模スーパーの資本金が上記関係にあり、同スーパーからの要求が上記禁止事項に該当する場合は、上記のように独禁法違反になり得ることを示すなどして適切な対応を訴えるというのも一つの方法でしょう。

(山田洋嗣)

公正取引員会等から下請法違反の調査の文書が届いた場合の対応

当社は下請運送業者数社を利用して運送事業を営んでいます。先日、公正取引委員会から調査の文書が届きました。どのように対応すればよいでしょうか。

下請法違反については、下請事業者からの積極的な申告はあまり期待できないため、公正取引委員会や中小企業庁による親事業者及び当該親事業者と取引のある下請事業者を対象にした定期的な書面調査等が行われています(同法9条)。 同調査に対し、親事業者が調査票を提出しない場合や虚偽の報告を行う場合等には罰金が科せられることになっています(同法11条)。 よって、貴社としては、適切に同調査に協力する必要があります。 尚、万一、下請法違反として摘発された場合、その企業経営に与える影響は甚大です。 この点、下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者については一定の要件の下に勧告を免れることができ(平成20年12月17日下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者の取り扱いについて・公正取引員会)、同制度は書面調査の文書が届いた時点においても利用可能ですので、出来る限り早期に専門家に相談の上で対処されることをお勧めします。

(山田洋嗣)

コンテンツ

サイト内検索

独禁法・下請法ネットワーク@名古屋 事務局

  • 愛知県弁護士会所属
    山田 洋嗣 法律事務所(山田 洋嗣)
  • 〒460-0002
  • 愛知県名古屋市中区丸の内3-17-4
    第11KTビル3階A室
  • 電話番号:052-950-2056
  • FAX番号:052-950-2057